心 気持ちが揺れるあなたへ
その気持ちのまま、
ここで、ひと息。
受け止めきれない日にも、少し先を考えたい日にも。
自分を急がせずに、今日を過ごすためのページです。
昨日は話せたのに、今日は何も聞きたくない。
そんな日があっても、昨日までの自分を否定しなくていいんです。
このページには、いくつかの気持ちと、その日に選べる小さな工夫を置いています。今の自分に近いところだけ、読んでみてください。
いま、近い気持ちから。
全部を読む必要はありません。ここに並んでいる順番に、意味はありません。
こんな気持ちのとき
まだ、実感がわかない
病院ではうなずいていたのに、家に帰ると何を言われたのか思い出せない。いつもと同じ景色を見ながら、自分だけ別の場所にいるように感じる。そんな戸惑いを抱えることがあります。
今、気持ちが追いついていなくても、診察で聞き直したり、誰かに説明を一緒に聞いてもらったりできます。落ち着いて話せるようになるまで、一人で準備を整える必要はありません。
いま、できそうなら一つだけ。
病院でもらった紙を、一つの袋やファイルにまとめる。今日はそれだけにして、次の受診日と連絡先を確かめておきましょう。
言葉にするなら、こんなふうに。
「前回は頭に入らなかったので、いま分かっていることを、もう一度短く教えてください」
そばにいる方へ:こんな声のかけ方も
「覚えていないところは、一緒に聞き直そうか。今日は、どこまで話せそう?」
同じ質問をされても、責めずに確かめ直してみてください。本人の希望を聞いて、説明のメモや付き添いを手伝えます。
こんな気持ちのとき
どうして私が、と腹が立つ
周りはいつも通りなのに、どうして自分だけ。悪気のない励ましにも、いら立ってしまう。あとから、そんな自分にがっかりすることもあるかもしれません。
怒りの中に、怖さや、失いたくないものへの思いが混ざっていることもあります。ただ、理由がすぐに分からなくてもかまいません。まずは「今は腹が立つ」と、気持ちに名前をつけるだけでも。
いま、できそうなら一つだけ。
言葉が強くなりそうなら、「少し一人になるね」と会話を休む。落ち着いてから、嫌だった言葉や、今してほしいことを一つ伝えてみましょう。
言葉にするなら、こんなふうに。
「今は励ましがつらく聞こえるんだ。解決しようとせずに、少し聞いてもらえる?」
そばにいる方へ:こんな声のかけ方も
「今、何がいちばんつらい? 話したくなければ、少し時間を置こうか」
怒りを受け止めようとして、傷つく言葉を耐え続ける必要はありません。「その言い方はつらいから、いったん休もう」と伝えて、医療者にも相談してください。
こんな気持ちのとき
あのとき、こうしていたら…
過去の予定や選択を思い返し、「別の選び方をしていれば」と考え続けてしまう。今からでも何かをすれば、取り戻せるのではと、必死に情報を探すこともあるかもしれません。
今分かったことを、当時の自分がすべて知っていたわけではありません。病気の原因や経過について、分かっていない部分を、自分を責める言葉で埋めなくてもいいんです。
いま、できそうなら一つだけ。
紙を二つに分けて、「先生に確かめたいこと」と「答えが出なくてつらいこと」を一つずつ。前者は診察へ、後者は気持ちの相談へ持っていけます。
言葉にするなら、こんなふうに。
「もっと早く気づけばよかった、と自分を責め続けてしまいます。この気持ちも相談したいです」
そばにいる方へ:こんな声のかけ方も
「あのときのことが、ずっと気になっているんだね。一人で考えているのがつらかったら、聞かせて」
すぐに結論を出したり、家族同士で責任を探したりせず、気がかりを聞いてみましょう。新しい治療や食品を試したいときも、使う前に担当の医療者へ相談を。
こんな気持ちのとき
悲しくて、何もしたくない
返信ができない。好きだったことにも手が伸びない。人に会うと疲れるのに、一人でいるのも心細い。そんな日は、何から始めればよいか考えること自体が、重い仕事になります。
今日は予定を減らしたり、人に頼んだりしてよい日です。うまく説明できないときは、「今は何もする気になれなくて困っている」と、その一言を伝えるだけでも相談が始まります。
いま、できそうなら一つだけ。
「今日の連絡を代わりにしてほしい」「食事の用意を手伝ってほしい」など、負担になっていることを一つ、誰かに預けてみましょう。頼める人が思い浮かばなければ、病院の相談窓口へ。
言葉にするなら、こんなふうに。
「眠れない日が続いて、日中も何も手につきません。体のことと一緒に、気持ちのことも診てほしいです」
そばにいる方へ:こんな声のかけ方も
「返事をしなくてもいいよ。今日は何を代わろうか。そばにいるのと、一人で休むのと、どちらがいい?」
泣きやませたり、元気を出させたりすることを目標にしなくても。食事や睡眠、暮らしの変化が気になるときは、ご本人と相談して医療者につないでください。
こんな気持ちのとき
いま、できることを考えたい
病気のことを少し聞けそうな日。食べたいものや、会いたい人が思い浮かぶ日。怖さが残ったままでも、今日の生活に目を向けられることがあります。
その時間を大事にしていいし、笑えるときは笑っていい。「病気なのに楽しんでいいのかな」と遠慮しなくてもかまいません。明日また落ち込んでも、今日できたことが消えるわけではありません。
いま、できそうなら一つだけ。
「次の診察で一つ質問する」「友人と短く話す」など、自分にとって大切なことを一つ。予定には、休む余地も残しておきましょう。
言葉にするなら、こんなふうに。
「今日は少し考えられそう。まず、この一つだけ一緒に整理してもらえる?」
そばにいる方へ:こんな声のかけ方も
「今日はそれをしてみたいんだね。無理のない範囲で、どう手伝おうか」
「もう大丈夫だね」と決めず、その日の希望を確かめましょう。元気に見える日にも、不安な気持ちを話せる余地を残しておけます。
どれにも当てはまらない日も。
怖い、寂しい、何も感じない、むしろ落ち着いている。気持ちは、この5つに収まりません。「自分はおかしいのかな」と、分類に合わせなくていいんです。
先のことばかり考えてしまうとき
心配を、「今、医療者に聞けること」と「まだ分からないこと」に分けてみても。検索で苦しくなるときは画面を閉じ、聞きたいことだけをメモに残す方法もあります。
気持ちを整理しようとすること自体がつらければ、整理できないまま、相談してかまいません。
答えを出さずに、少し置いておく。
書くことで少し整理できそうな日だけ。言葉が出てこなければ、空欄のままでかまいません。
小さなメモ
いまの自分のための、3行。
入力内容は送信・保存されません。残したい内容は、ご自身のメモにコピーしてください。名前や病院名は書かなくて大丈夫です。
気持ちを、家族とそろえなくても。
本人はまだ考えたくないのに、家族は情報を集めたい。その逆もあります。同じ病気に向き合っていても、知りたい量や話せるタイミングは、それぞれです。
「私は今、ここが心配なんだ。あなたは今、何を知りたい? 今日は話したくない?」
家族の不安も、別に相談してよいものです。どちらか一人が、みんなの気持ちを引き受けなくてかまいません。
ご家族のためのページへ →頼るタイミングを、先延ばしにしないために
気持ちのつらさも、診察で話していい。
眠れない、食べられない、何も手につかない。不安や落ち込みが強く、暮らしに支障があるときは、続いた日数にかかわらず担当医や看護師に相談してください。「よくある反応」と「我慢しなければいけない」は別のことです。
「病気の説明だけでなく、眠りや気持ちのつらさも相談したいです」
がんに伴う心のケアを専門にする医師や、心理職につないでもらえます。窓口が分からなければ、がん相談支援センターへ。ご本人もご家族も、その病院に通っていなくても無料で相談できます。
急に混乱したり、いつもと様子が大きく違ったりするときは、心の問題と決めつけず、速やかに医療者へ伝えてください。
診断されたときから受けられる、緩和ケアも知る →このページの、考え方について。
キューブラー=ロスの「5つの反応」をもう少し知る
精神科医キューブラー=ロスが、死に直面する人々の経験から示した考え方です。よく知られる言葉に「否認・怒り・取引・抑うつ・受容」があります。
進む順番も、到達しなければならないゴールもありません。人の心が全員この5つを順番にたどると、科学的に確立されているわけではありません。重なること、繰り返すこと、経験しないこともあります。
このページの見出しは、気持ちを話しやすくするための当サイトの表現です。後悔がすべて「取引」に当たるわけではなく、「何もしたくない」だけでうつ病とは診断できません。「できることを考えたい」人が、ほかの人より進んでいるという意味でもありません。
がんと診断されたことは、最期が近いことと同じではありません。この考え方を、病気の見通しや心の状態を判定するために使わず、ご本人の話を聞く手がかりとして紹介しています。
- 否認
- 起きたことを、まだ現実として感じられない。
- 怒り
- なぜ自分なのか、と悔しさやいら立ちが湧く。
- 取引
- 「もし何かをすれば変わるのでは」と、状況を変えられる条件を探す。
- 抑うつ
- 悲しさや落ち込みを感じる。ここでは、うつ病の診断名として使っていません。
- 受容
- 起きていることと共に過ごす方法を考える。賛成すること、諦めること、いつも穏やかでいることとは違います。
こんなことも、気になったら。
前向きになれないと、病気に悪いのでしょうか?
前向きでないことが、がんの経過を悪くするという十分な科学的根拠は得られていません。気持ちまで治療の成績表にしなくてかまいません。つらさを和らげる支えは、気持ちが前向きかどうかに関係なく受けられます。
誰にも話したくないときは?
誰に、どこまで話すかを選べます。「今日は話したくない」と伝えて、病気と関係のない話をする日があっても。生活に困るほどのつらさは、身近な人に話せなくても医療者へ相談できます。
少し楽になったあと、また泣いてしまいました。
検査や受診の前後などに、気持ちが変わることがあります。前の気持ちに戻ったように感じても、失敗ではありません。その日の負担に合わせて、頼みたいことを変えてよいのです。
気持ちが整う前から、頼っていい。
ここにある工夫や会話例は、選択肢の一つです。合わないものは選ばなくてかまいません。参考にした情報
- David Kessler|The Five Stages of Grief(英語) ↗
- 国立がん研究センター|がんと診断されたあなたへ、不安を感じたときには ↗
- 国立がん研究センター|がんと心 ↗
- 国立がん研究センター|がんと上手につき合うための工夫 ↗
- 国立がん研究センター|専門家による心のケア ↗
- 国立がん研究センター|がん相談支援センターって、どんなところ? ↗
- キューブラー=ロス財団|5 Stages of Grief(英語) ↗
情報確認日:2026年10月24日。原資料をもとに当サイトの言葉でまとめています。参照先の機関による監修・推奨を意味しません。
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