06 ご家族へ / 大切な人の支え方
大切だからこそ、
まず、本人の気持ちから。
「してあげたい」を、本人が望む支えへ。
今の体調と、譲れない想いから考えてみましょう。
少しでも食べて、元気になってほしい。
また一緒に出かけたい。笑っていてほしい。
大切な人だからこそ、支える方が、ご本人以上に頑張ろうとすることがあります。その願いは、自然なものです。
けれど、よかれと思って勧めた食事や運動、励ましが、その日のご本人には重く感じられることもあります。そんなときは、何かを増やす前に、少し立ち止まってみませんか。
まず、自分に聞いてみてください
自分がつらいとき、どう感じるでしょう。
「リハビリを頑張ろう」
元気になってほしい気持ちは分かっても、「今のしんどさを、先に分かってほしい」と感じるかもしれません。
「たくさん食べてほしい」
用意してくれた人に申し訳なくて、食べられないつらさを、言い出しにくくなるかもしれません。
「もっと頑張って」
もう十分に頑張っていて、これ以上どうしたらいいのか、分からなくなるかもしれません。
これは、がんと風邪や胃腸炎を同じ病気として考えるための例ではありません。つらいときに、周りの言葉がどう届くかを想像するための例です。
想像したら、本人に確かめる。
「私ならこうしてほしい」は、相手を知るための入り口です。ご本人も同じとは限りません。「自分がどうしてほしいか」から、「本人は今、どうしたいか」へ。そこを、確かめてみましょう。
「前はできた」より、「今日はどう?」。
以前は歩けた距離。いつも食べていた量。好きだった料理や趣味。長く一緒にいるほど、「健康だったころの本人」が、知らないうちに基準になりやすいものです。
病気や治療によって、体力や食欲、味やにおいの感じ方が変わることがあります。好きなことでも、今日は楽しむ余裕がないかもしれません。昨日できたことが、今日は負担になることもあります。
昔の本人をよく知っていることと、今日の本人の状態を知ること。その両方を、大切にしてみてください。
食事:食べた量だけで、頑張りを測らない
食べてほしい気持ちが強いほど、残った食事を見るのがつらいこともあります。でも、食べられないことを、意欲や努力の問題にしなくていいんです。
「今は食べられそう? 量やにおいで、つらいことはある?」
「用意したものを食べられなくても、気にしないでね」
以前の好物をたくさん用意する前に、その日の希望を聞いてみましょう。食べられないことが続くときや、水分もとれないときは、担当の医師や看護師へ。食事の工夫は管理栄養士にも相談できます。
運動・リハビリ:今日の体調に合わせて考える
体力を保ってほしいという願いがあっても、本人には痛みやだるさ、息苦しさなどがあるかもしれません。まず、何が負担なのかを確かめましょう。
「今日は、どこがしんどい? できそうなことを、先生やリハビリの担当の方と一緒に考えようか」
必要な運動や休息は、病状や治療によって違います。無理に頑張らせたり、一律に休ませたりせず、本人の希望と体調を医療者に伝えて調整しましょう。
趣味・会話・面会:「好きだったから」だけで決めない
好きな音楽も、親しい人との会話も、疲れている日は負担になることがあります。逆に、病気の話から離れて、いつもの話をしたい日もあります。
「今日は少し話す? 静かに過ごすほうがいい?」
「会いに来てもらって大丈夫? 今日はやめておこうか?」
「せっかく準備したから」と応じてもらうより、断ったり途中でやめたりできる余地を残しておきましょう。
食事や運動について医療者から指示がある場合は、その内容を確認し、今の体調に合わないと感じる点を相談してください。
本人の今を知ってから、できることを考える。
まず、知る今、何がつらい?「痛い」「疲れる」「話すのもしんどい」。気持ちも体のことも、言えそうな範囲で。
次に、確かめるどう過ごしたい? 何は自分でしたい?してほしいことと、してほしくないこと。どちらも大切な希望です。
それから、考えるそのために、何を手伝おうか。できることを具体的に伝えて、必要な助けを選んでもらいます。
「全部やっておくね」の前に、
「自分でしたいところはある? 私はどこを手伝おうか?」
一度に全部聞かなくて大丈夫です。「今は話したくない」「まだ分からない」も、そのときの答え。返事を急がず、話せそうなときに、また確かめてみてください。
「手伝ってほしくない」にも、大切な想いがある。
時間がかかっても、自分で着替えたい。家族の前では、いつもの父親でいたい。弱っている姿を、今は見せたくない。
周りには小さく見えることでも、ご本人にとっては、自分らしさを守るための譲れないことかもしれません。「遠慮しなくていいのに」「頑固になった」と決める前に、その理由に耳を傾けてみてください。
尊厳を守る、ということ。
病気になっても、一人の人として尊重され、自分のことを自分で選べるように支えること。できなくなったことだけに目を向けず、その人が大切にしてきた役割や価値観にも目を向けることです。
助けを借りても、その人の価値は変わりません。どこを、誰に、どんなふうに手伝ってもらうか。その選び方にも、本人の希望があります。
たとえば、「家族には、かっこいいパパでいたい」
「最期まで、子どもたちにはかっこいいパパでいたい」。そんな想いを大切にしている方もいるかもしれません。これは、考えるための一例です。
家族が「弱いところも全部見せてほしい」と願っていても、本人には守りたい姿があります。その人にとっての「かっこよさ」が何なのか、決めつけずに聞いてみましょう。
「家族の前で、大切にしたいことはある?」
「見えないところで、手伝えることはある?」
身支度の一部だけを手伝う。体のケアは、本人が望めば看護師などに頼む。家族の相談に乗る時間は、本人に任せる。本人の希望を聞いて、役割や過ごし方を一緒に考えられます。
一方で、弱さを見せたい日も、すべて任せたい日もあるかもしれません。かっこよくいることを、周りから求めないことも大切です。
手助けを断られたとき、どうしたらいい?
断られたことを、支えようとした気持ちまで否定されたと受け止めなくても。今は必要がない、やり方が合わない、別の人に頼みたいなど、さまざまな理由が考えられます。
「分かった。必要になったら教えてね」
「今は自分でしたいんだね。どこで待っていようか?」
安全面や体調が心配なときは、何が心配かを具体的に伝え、本人の希望を保ちながらできる方法を医療者と相談しましょう。本人の意思を確かめにくいときも、家族だけで抱えず、これまで大切にしてきたことを医療者と共有してください。
本人が選べることを、日常の中に残す
病気のことを誰に伝えるか。誰と会うか。診察に誰が同席するか。着る服や、その日の過ごし方。できる範囲で、ご本人に確かめてから決めましょう。
治療の情報や食品、サービスを勧めたいときも、まず「今、この話を聞きたい?」と。実際に取り入れる前には、担当の医療者に確認してください。
小さなメモ
「私の願い」と「本人の希望」を、少し分けてみる。
入力内容は送信・保存されません。残したい内容は、ご自身のメモにコピーしてください。名前や病院名は書かなくて大丈夫です。
何かしてあげる前に、
その人が、今どうしたいかを。
うまくできなかった日があっても、関わり方は少しずつ変えていけます。
← ほかの気がかりを選ぶ今日は、ここまででも。