支えている、あなたのことも
大切だから、つらくなる。その気持ちも、ここで話していい。
苦しそうな姿を見るのがつらい。本人は眠っているのに、心配で眠れない。「少しでもよくなってほしい」と頑張るほど、自分の心が置き去りになってしまうことはありませんか。ここは、支えているご家族の気持ちを考えるページです。
大切だからこそ、しんどいこと。
「本人がいちばん大変なのに、こんなことを思ってはいけない」。そうやって、自分のつらさまで押し込めなくて大丈夫です。近い気持ちがあれば、そこだけ開いてみてください。
① 苦しそうな姿、落ち込む姿、やせた姿を見るのがつらい
以前なら笑っていた場面で、うつむいている。服がゆるくなった。何気ない変化に気づくたび、胸が詰まることがあります。
何とか励まさなくては、元気にしなくては、と急がなくていいんです。「今日はそばにいようか」と聞く。つらさを医療者に伝える。ご家族にできる関わり方を、一つずつ考えましょう。
見ている自分まで苦しくなったら、誰かに交代してもらって少し離れる時間を。ずっと平気な顔で付き添うことまで、自分に求めなくてかまいません。
「本人のつらさも心配ですが、それを見ている私も苦しいです」
ご家族自身の相談として、そのまま伝えてください。
② 本人は眠っているのに、気になって自分は眠れない
呼吸の音が気になる。寝ている間に何かあったら、と思う。「一緒に休んで」と言われても、目を閉じるのが怖い夜もあります。
自分を無理に安心させようとする前に、夜をどう過ごすか、担当の医療者と具体的に決めておきましょう。
- 今の状態で、夜にどんな見守りが必要か。
- どんな変化があったら、どこへ連絡するか。
- 自分が休む間、誰に何を任せられるか。
「何晩も気が張って、私は眠れていません」。本人の様子と一緒に、自分の睡眠のことも話してください。見守る人の体力が続く方法を、一緒に相談してよいのです。
③ 何かしてあげたくて、頑張り続けて疲れてしまう
食事を工夫する。情報を探す。予定を調整する。何もしていない時間があると、申し訳なくなる。「もっとできることがあるはず」と、終わりが見えなくなることもあります。
今日は、本人が望んでいることを一つ確かめる。そのうえで、自分に無理なくできる範囲を決めてみてください。
「今日は付き添いができる。夕食の準備は、ほかの人にお願いしたい」
できることを増やし続けるより、誰かと分けて続けられる形を。手を止める時間があっても、大切に思う気持ちが減るわけではありません。
④ よかれと思ってしたことを、受け入れてもらえず傷つく
栄養を考えて作ったのに、「食べたくない」。食べたいと言われて用意したら、「やっぱり無理」。楽しみに待っていた分、がっかりして、悲しくなって、腹が立つこともあると思います。
まず、そう感じた自分を責めないでください。料理だけでなく、「少しでもよくなってほしい」という願いも込めていたのですから。
一方で、食べたいと思ったときと、目の前に食事が来たときで、体のつらさが違うことがあります。食べられないという返事だけで、気持ちまで拒まれたと決めなくて大丈夫です。
「さっきは食べたかったんだね。今は難しいんだね」
落ち着いて言えない日は、少し間を置いても。
その場で何品も作り直さず、「次は用意する前に、もう一度聞いてみよう」と決める方法もあります。本人に食べる約束を求めなくても、作る側がどこまでできるかを伝えてかまいません。
食べにくさや体重の変化は、ご家族の工夫だけで解決しようとせず、医療者に相談してください。
食べること・食事の困りごとへ →よくなってほしい。その願いは、持っていていい。
願いが強いほど、「こんなに頑張ったのだから、少しはよくなるはず」「今度こそ喜んでくれるはず」と期待したくなります。思うようにならないたびに、本人も自分も追い詰めてしまうことがあります。
自分ができる支えと、自分だけでは決められないことを、少し分けてみませんか。
自分にできる支え
- 今、どうしてほしいかを聞く。
- できる範囲で用意し、手伝う。
- 気になる変化を医療者に伝える。
- 一人では難しいことを人に頼む。
自分だけでは決められないこと
- 用意した食事を食べられるか。
- 気持ちが明るくなるか。
- どんな言葉や返事が返ってくるか。
- 治療によってどこまで回復するか。
願いを持ちながら、「今日はそうならないかもしれない」という余地も残しておく。結果まで引き受けなくていい、と自分に伝えてみてください。
私は、これを冷たく線を引くことだとは思いません。本人の今を尊重しながら、ご家族の心も守るために大切なことだと考えています。
「少し休んで」だけでは、休めないから。
代わる人がいない。何を任せればいいか分からない。離れても気になってしまう。休めない理由があるなら、そこから相談しましょう。
- 「手伝って」より、「明日の付き添い」「今夜の連絡係」など、一つの役割を渡す。
- 自分が席を外す時間と、その間に任せることを決める。
- 家事や連絡を全部いつもどおりにせず、今は減らせるものを探す。
- 家族の中だけで難しければ、看護師や相談員に「休める方法を一緒に考えてほしい」と伝える。
眠る、食べる、自分の通院に行く。そんな時間まで後回しにし続けなくていいのです。つらくて余裕がなくなったときは、優しい言葉が出なくなる前でも、出なくなってしまったあとでも、助けを求めてください。
その支えで、続けられている毎日があります。
病院へ一緒に行く。困っていることを代わりに伝える。帰る場所を整える。離れて暮らしながら、電話をかける。
一つひとつは、目立たないことかもしれません。でも、ご家族のそうした関わりがあって続けられている療養や、保たれている日常があります。「自分も、この人の毎日を支えている」と思っていてほしいのです。
たくさん食べられた日や、笑顔が返ってきた日だけに、支えの意味があるわけではありません。体調がよくならない日も、返事をする余裕がない日も、それまでしてきたことが無意味になることはありません。
そのうえで、支えの全部を一人が担う必要はありません。入院や療養場所の変更、専門職の手を借りることを選んでも、家族としてできなかったという話ではないのです。
「私がいなければ」と自分を追い込むより、
「私も支えている。だから、私も支えてもらおう」と思っていてほしい。
ご本人のことも、ご家族のことも。どちらも大切にしながら、続けられる形を一緒に考えていきましょう。
本人の前では言えない気持ちも、相談していい。
「もう疲れました」「食べてもらえなくて、つい怒ってしまいました」「この先が怖いです」。きれいな言葉に整えなくて大丈夫。ご家族だけで、医療者やがん相談支援センターに話すこともできます。
話し始めにくいときは、このまま見せても。
- 本人の様子が心配で、私が眠れていません。
- できることを考え続けて、疲れ切っています。
- 本人への気持ちと、自分のつらさを整理したいです。
- 私が休むための方法や支援を相談したいです。
眠れない、食べられない、日々の生活がつらい状態が続くときは、ご自身のかかりつけ医などにも相談してください。ご家族自身も、ケアを受ける側になってよいのです。